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「あら、おかえりなさい」
「ただいま、かーちゃん」
ほらあがって、暑いわねえ。冷たいコーヒーでもいれるわね
葵くんのお母さんは笑ってキッチンに向かった
葵くんもいつもとかわらずリビングに向かった
今から葵くんの事を話そうと思う
なんだか不安だけど
俺もリビングに向かった
「今日はどうしたの?」
暑いからってアイスコーヒーを出された
一口のんだらすごく美味しかった
葵くんはストローで遊んでいる
「葵くんのことで…」
「なにかあったの?」
「若年性アルツハイマー…って知ってますか」
葵くんのお母さんの顔色が変わった
まさか、と口元をおさえている
ごめんなさいそうなんですそのまさかなんです
「嘘…でしょ」
「……」
ごめんなさいごめんなさい
本当なんです嘘じゃないんです
「あぁ…あ」
「母ちゃん?泣かないで?」
「…葵、葵」
葵くんの温かい手と葵くんのお母さんの手が重なった
何度も撫でるように
「ごめんなさいね、ごめんなさい」
私が不甲斐ないから
謝らないであなたは悪くないんだから
お医者さんが言ってたよ、誰も悪くないって仕方ないって運命だって
「母ちゃん…?」
「…ごめんなさいね」
「?」
葵くんのお母さんは俺と向かい合った
すごく真剣な表情だった
「私が面倒見ます」
「えっ?」
「葵がこうなってしまった以上、私が…しっかりしなきゃ」
「あのっ」
「紅くんだって仕事があるから…それにやっぱりもう」
「俺が看病します」
「でも」
「俺が看病したいんです。どうしても!お願いします!」
「どうして…」
「どうしても、葵くんと一緒に居たいから…」
心臓の音がうるさい。なんだか恥ずかしいけど
「…紅くんは他人なのに?」
思わず言葉が詰まった
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