いち

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どたばた どたばた 忙しない足音で現実に戻された 「…ん」 目を開くと隣に居た葵くんはいなくて きっと足音は葵くんの足音なんだろう 葵くんは一体どうしたのか 「葵くん?」 家の中をなにかを探し回るように走り回ってて おんなじ扉を開けては閉じて ちょっと様子がおかしかった 「葵くん、どうしたの?」 ドアノブを回す手に俺の手を重ねた あたたかい手だった 「家に帰らなきゃ」 「え?」 「家に帰らないと、母ちゃんが心配するから」 不安げに揺れる瞳が俺を映す 「あおい、くん?」 「こーくん、出口はどこ?わからないよ」 玄関はちゃんとある なのに彼は何も知らない様子で俺に問いかけた 葵くんは 葵くんは… 「葵くんっ、出掛けよう」 彼を病院に連れて行かなきゃ 「こーくん出口はそっちじゃないよ」 急いで玄関に向かった 彼の手を握って外に飛び出した 「あぁ待って右足が痛い!なんで?」 彼は右足だけ靴を履いていなかった ごめんね葵くん 痛い、痛いって言う葵くんを無視して車まで走った .
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