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同じ学年だったにも関わらず、この間まで存在すら知らなかったぼくが、どうしてこんなに斉藤さんのことばかり考えてしまうんだろう。
今までこんな気持ちになったことは一度だってなかったのに。
それが恋っていう奴なのか?
「わかりやすいんだよお前。」
ある日の公園の帰り道、黒田に言われた。
多分これであの公園に通い始めて5回目くらいだ。
「なにが?」
自転車に乗ってぼくの少し前を走る黒田の背中に声をぶつける。
自転車に乗っていると、風の音がうるさくて大きな声を出さないと聞こえないんだ。
黒田はスピードを少し緩めてぼくに並んだ。
そしてニヤリと笑って、
「……へたれ。」
と呟いた。
「なにがだよ。」
少しむっとして睨めば、黒田は真顔になった。
「お前、好きなんだろ?」
どこか遠くを見つめるその瞳にドキっとした。
黒田は俺よりほんのちょっと背が低いからいつもなんとなく子ども扱いしてしまう。
だけど、たまにこういう、ぐんと大人びた表情をするんだ。
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