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プロローグ
『過ごしてきた時間や人生に、“もしも”だなんて仮定を挙げたらキリがない』
そう、例えば、『もしももっと勉強しておけば』だとかそんな感じのこと。それは勿論、勉強だけじゃなく人生の中で仕事でも恋愛でも人間関係でも同じ。
この言葉を、テレビで聞いたのかそれとも何かの本で見かけた言葉だったか……
別にそんなことはどちらでもいいのだけれど、とにかく何処かで聞いた言葉が頭を過ぎり、無意識に大きな溜息をついていた。
それを聞いた当時は何とも思わなかった言葉が、今はやたらと胸に響いてくる。
確かにそうだ。
もう何度も、もしもと考えた。だけど、もしもだなんて思っても何も変わりはしない。
ただ、後悔や悔しさが静かに募り、もどかしさによって身動きがとれなくなるだけ。
それに、もしもで過去が変わりのなら、俺は今ここでこんなことをしていない。
電車の窓越しに見る、真っ青な空。
ヘッドホンからは、彼女が好きだと言っていたコブクロの曲がエンドレスに流れていた。
間もなく到着したお台場海浜公園駅で電車を降りて、改札を出る。
仮定がないからこそ、あの日から俺はこうして時々ここに足を運ぶ。
彼女の好きだったガーベラの花束を持って、彼女が好きだったこの海を訪れているのだ。
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