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着替えるために案内されたのは、堤防の向こう側。蒼甫の主観では永らく住人を迎え入れてはいない、旧い平屋建ての家屋だった。  「多分、サイズは合っているからよ。これを着てくれや。」畳張りの和室で大男、佐伯が喪服を差し出す。  生活痕が希薄にも関わらず、室内にも外装にもこれといって瑕疵は認められない。 蒼甫は服を受け取ると着替えながら久我に疑問をぶつけた。  「佐伯さん。あの・・・僕達が居るここは現実の世界なのですか? 気のせいかとも思っていたのですが。」  「うん? ここが何処かだって。」 縁側で寝転んでいた大男はのっそりと起き上がる。 先程の事もあいまって、佐伯の一挙手一投足に注視してしまう。 だが、この男は(厳つい外見ながら)意外と他人の話しを聞いてくれる性分らしい。蒼甫は安心した。
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