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「おいっ」
その時、背後から野太い声が突然響いた。
「動くなっ 」野太い声は男を牽制する。
男は内心激しく混乱しつつも、その声に従う。警官であろうか? こんな格好では不審に思われても無理は無い。
足音が近付いてくる。下草を踏みしめる足音、徐々に声の主の気配も露わになってきた。
直に男の真後ろにまで野太い声の持ち主は歩を進める、気配でも充分判る大男だ。男は背中に冷たい汗が流れるのを自覚した。
「名前は?」
「名前・・ですか?」
「おっと、動くんじゃねぇ 前を見てろ」 後ろを振り向こうとする男を再度牽制する。気のせいだろうか?、男は背中に銃口を突き付けられている気がした。
「津村 蒼甫です」______蒼甫はびくつきながら問に答える。
「こちら側にどうやって来たんだ? 回し者か?」
回し者?
蒼甫はますます混乱の度合いを強める。寧ろ聞きたいのは蒼甫の方だ、ここは何処なのですかと。
「信じては貰えないでしょうが、此処にどうやって来たのかは覚えていないのです。それと僕は誰の回し者でもありません」 蒼甫は正直に答える。
「嘘を吐くんじゃねぇ!。」大男は語気を強める。同時に蒼甫の背中への寒気も強まった、気のせいでは無い。俺は理由も判らないまま銃口を突き付けられている。
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