1

4/4
前へ
/18ページ
次へ
「 おい。どうした?」   何事だ。なんだなんだと複数の声が堤防の方から聞こえて来た。  「名前は聞いたのか?」 大男に問いかける。落ち着いた初老の男性のようだ。  「津村蒼甫と名乗りました。」大男は丁寧に応えた。  「津村ねぇ。 聞かない名前だな。 なぁ、五十鈴の。津村という名字で"白兎" に関係する人っていたっけか?」 「さぁてね。白兎も端っこまで含めると結構な数になるからね。ハグレなんじゃないかえ? あたしは知らないよ」  「ハグレ、か」  蒼甫の背後で、色々とやり取りが交わされている。あぁ、俺はこれからどうなるのだろう?。蒼甫は途方に暮れる。すると背後でざわめきが際立った。察するにまた誰かが、堤防を下って来たらしい。  「誰か、 いらしたの?」  やり取りの中に若い、というより未だ幼さを残した少女の声が交ざった。  「ヤカタ様」  その少女の登場は、場の雰囲気を一変させた。 縺れた糸が綺麗に編まれるように、整然とする。 「関さん 説明を」 少女はごく自然に場を取り仕切ると、初老の男性____関というらしい____に説明を求める。 相も変わらず 蒼甫は背後を振り向けないままだが、少女の雰囲気に呑まれていた。 何者なのだろう?。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加