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「 おい。どうした?」
何事だ。なんだなんだと複数の声が堤防の方から聞こえて来た。
「名前は聞いたのか?」 大男に問いかける。落ち着いた初老の男性のようだ。
「津村蒼甫と名乗りました。」大男は丁寧に応えた。
「津村ねぇ。 聞かない名前だな。 なぁ、五十鈴の。津村という名字で"白兎"
に関係する人っていたっけか?」
「さぁてね。白兎も端っこまで含めると結構な数になるからね。ハグレなんじゃないかえ? あたしは知らないよ」
「ハグレ、か」
蒼甫の背後で、色々とやり取りが交わされている。あぁ、俺はこれからどうなるのだろう?。蒼甫は途方に暮れる。すると背後でざわめきが際立った。察するにまた誰かが、堤防を下って来たらしい。
「誰か、 いらしたの?」
やり取りの中に若い、というより未だ幼さを残した少女の声が交ざった。
「ヤカタ様」
その少女の登場は、場の雰囲気を一変させた。 縺れた糸が綺麗に編まれるように、整然とする。
「関さん 説明を」
少女はごく自然に場を取り仕切ると、初老の男性____関というらしい____に説明を求める。 相も変わらず 蒼甫は背後を振り向けないままだが、少女の雰囲気に呑まれていた。 何者なのだろう?。
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