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「状況は分かりました。 取り敢えず、 佐伯さん。その物騒なモノはしまいましょうか。 彼は無害よ」
野太い声の佐伯と呼ばれた大男は、直立不動にて敬礼すると脇に銃をしまった。
「災難でしたね。 もうこっちを向いても大丈夫ですよ」
「は、 はい 」 言われるがままに蒼甫は後ろを振り返る。
大男が二人、若い方が佐伯で年配が関か。 どちらも天を衝かんばかりの堂々たる体躯だ。その後ろには車椅子に乗った老婆が興味深そうな眼差しで蒼甫を観ている。関から五十鈴と呼ばれていたのはこの老婆だろう。
背後にはまだ何人かがいるらしい、しかし西日のせいで蒼甫の場所からは良くは見えない。全員が思い思いの黒服を着ている、 ひょっとすると喪服なのだろうか?
そして蒼甫は少女の方にと視線を向けた----。
・・・
・・
!
今まで生きて来たなかで。生まれて初めて、蒼甫は人との出会いで絶句した。
こうまで美しい人間が存在するのか?
矢張り俺は夢を観ている。目の前に居る少女は蒼甫の美の基準を根底から壊して魅せた。
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