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どれぐらいそうしていただろう。
気がつくと、すぐ近くに人の気配を感じた。
頭をゆっくり上げると、そこには男の子がいた。
丸刈りの男の子は顔を炭で黒くしながら、私をじっと見ている。
「なによ!」
先のこともあって、少し強く当たってしまった。
この子には何の罪もないのに。
私はなんて最低なんだ。
男の子は私の強い言葉に少しひるんだが、決心したように一回頷くと、強い目で私の瞳を見た。
「お姉ちゃんだよね?お兄ちゃんの彼女」
「・・・」
私は何も答えない。
「すぐわかった。とても可愛い人だって言ってたから」
晃くんは死の間際にこの子にどんなことを話したのだろうか。
晃くんらしくないなぁ、可愛いなんて。
少年はそれ以上何も話そうとはしない。
その代わり、私の前にグーを差し出した。
指の爪が四つ見えるように差し出されたそれに、私は何が伝えたいのか理解できない。
少年はゆっくりと手を開いた。
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