LAST EP 「また会える、その日まで」

11/12
前へ
/209ページ
次へ
どれぐらいそうしていただろう。 気がつくと、すぐ近くに人の気配を感じた。 頭をゆっくり上げると、そこには男の子がいた。 丸刈りの男の子は顔を炭で黒くしながら、私をじっと見ている。 「なによ!」 先のこともあって、少し強く当たってしまった。 この子には何の罪もないのに。 私はなんて最低なんだ。  男の子は私の強い言葉に少しひるんだが、決心したように一回頷くと、強い目で私の瞳を見た。 「お姉ちゃんだよね?お兄ちゃんの彼女」 「・・・」 私は何も答えない。 「すぐわかった。とても可愛い人だって言ってたから」 晃くんは死の間際にこの子にどんなことを話したのだろうか。 晃くんらしくないなぁ、可愛いなんて。  少年はそれ以上何も話そうとはしない。 その代わり、私の前にグーを差し出した。 指の爪が四つ見えるように差し出されたそれに、私は何が伝えたいのか理解できない。 少年はゆっくりと手を開いた。
/209ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加