エピローグ

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春、何かが始まるこの季節。 実際、僕の中学校生活も始まった。 登下校のカバンも、子どもぽかったランドセルから、コンパクトな平たいカバンへと変わった。 なんか少し大人になった気分だ。  入学式からの帰り道。今日はとても大事な用があった。 年に一度の約束の日。 僕はキレイに咲き誇っている桜に目もくれず、行くべき場所へと全速力で駆けた。 今日のために親がアイロンできっちりのばしてくれたワイシャツも、汗でべっとりしてしまった。  そんなこともお構いなしに走った僕は、一軒の家の前で足を止める。 表札には「吉原」と書かれている。 ピンポーンとインターホンを鳴らすと、女の人の声が聞こえてきた。お兄ちゃんのお母さん。 「良介君かい?はいっていいよ~」 その言葉に甘え、玄関を開きお邪魔しますとつげ、パタパタと二階へ駆け上がる。 ドアを開くと、そこには約一年ぶりに会うお姉ちゃんがいた。 「良君だあ~。大きくなったね~」 お姉ちゃんは益々キレイになっていた。 大人っぽさも増して、まさに女子大生といった感じ。 「さて、良君のお兄ちゃんのお墓参りに行きますか」 「うん!ねえ聞いて!僕には優しくてかっこいいお兄ちゃんが、二人もいたんだよ」 「うん、知ってるよ」
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