一章

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     そういえば、 このシュークリームを買いに行ったときに、 ちょっとした事件があった。      帰り道、道の真ん中に生後間もない子猫がいた。     弱々しく鳴くその命は、 今にも尽きようとしていた。     誰かが手を差し伸べれば、まだ助かるかもしれない。    しかし、俺はそれを黙認した。     あの場所から移したところで、 絶対に助かるわけでもないし、 ちっぽけな命だ。     こんなこと、 毎回気にしていたら疲れてしまう。      そう思った俺は、 早くその場を去ろうとした。     一直線上の道の真ん中にいる子猫から、 だんだんと離れて行く。     10メートル、20メートル。    遠くになるにつれ、 弱々しかった鳴き声はさらに小さいものになっていった。     そして30メートル離れたところで、 一直線上の道に大型トラックが顔を出した。     そのトラックは子猫めがけて突進していく。     やばい! あわてて子猫の方へ向き直ると、 道の端に一人の少女が立っていた。     自分が通っていた中学校の制服をまとった女の子。    
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