一章

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    子猫を道の端で見ていた女の子は、 次にトラックに目をやった。     そして子猫にまた視線を戻すと、 道の真ん中へ向かって地面を蹴った。     正確には子猫に向かって。    だめだ!間に合わない。      女の子は子猫を手ですくうように抱えた。     しかし恐怖からか、 その場に座り込んでしまう。    危ない! 最悪の状況を想像し、 目を覆う。        目を開いたとき、 トラックは女の子の数メートル手前で止まっていた。    運転手は降りてきて「大丈夫か?」など、  せわしなく聞いていたが、女の子の笑顔を見ると安心したのか、 トラックに戻っていった。       安堵した表情の女の子は子猫を抱きかかえ、 「お使いの卵割れちゃったよー」なんて言いながら笑っていた。     そんな女の子を見て、 少し胸が痛くなった。
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