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だが現実はそう甘くない
一瞬緩んだはずの般若の顔がまた戻ってきていた
「そういうこと…」
「な、何が?」
「マヤ。今日はテストだったわね」
どうやらテストが嫌でずる休みをしようとしてると勘違いされたようだ。
マヤはシンヤの幼稚な作戦が失敗したのを見て、ため息をつきながら目を伏せた
どうやら助け船を出す気もしないようだ
もちろん父は無関心に新聞の次のページをめくっただけだった
「そうね。昨日はテスト勉強をして遅くなったのでしょうから、朝起きれなかったのは不問にしましょう。でも自信がないからってテストをサボるなんて言語道断だわ!マヤ!」
手に持ったままの包丁が怖い!
直立不動のシンヤを尻目にマヤは食事を済ませる事にした
朝食のメニューはトーストに焦げた目玉焼き、そして味噌汁だ
数日前、父が母との喧嘩の最中に「お前の味噌汁は不味い」と漏らしたのが原因だそうだが
毎日朝ごはんには味噌汁が出る米でもパンでもお構い無い
昨日は塩昆布で出汁を取った味噌汁だった。塩辛くて飲めたものではなかったし、その出汁殻もそのまま具材になっていてとても美味しくなかった。
今日のは茶色く濁った液体から小さな魚の顔が出ている。きっと今日は煮干しで出汁を取ったのだろう
マヤは一気に食欲を無くした
トーストに味噌汁という時点でかなり無かったのだが
マヤが新たなため息をついている頃もシンヤは説教されていた
マヤは立ち上がりアゴをクイッと玄関に向けた
「先に行くわよ」との合図だ
シンヤはそのサインを見逃さなかった、すぐさま
「キャッ!もうこんな時間!」
と言った
母が時計を確認するために後ろを向いた瞬間にシンヤはダッシュでトーストを掴んで玄関に向かったのだった
父も無言で立ち上がりトーストをくわえながら玄関に向かった
「いってきまーす」
マヤに追い付いたシンヤは玄関を空けながら叫んで飛び出した
慌てた母は
「ちょっと!二人共味噌汁は飲まないの?せっかく…」といい掛けたが
後に出た父がドアを閉めてしまって最後まで聞き取れなかった
台所で一人残された母が3人分の手付かずの味噌汁を見てため息をはいた
自分のを一口飲んで
「不味いわ…」
流しに流してしまった
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