5人が本棚に入れています
本棚に追加
窓の外では蝉がうるさく鳴いている。
教室はエアコンが効いているから良いが、蝉はさぞ苦しいだろうに。しかし。
――退屈だ。毎日毎日、聴き飽きたオーケストラでも聴かされている気分になる。保健室にでも行こうか・・・・・・。いや、あそこには昨日も行ってしまったな、行くわけにはいかん。
俺は仕方なく、昨日見たテレビの批判やら、女の子とイチャイチャする妄想やらをして、窓の外を眺めることにした。
本日最後のチャイムが鳴った。
やっと、退屈なオーケストラからも解放された。ささっと荷物をまとめて帰るとしよう。
はやぶさの如く荷物をまとめて教室を出ようとしたとき、後から声がした。
「誠!! 飯でも食いに行こうぜ。」
声の主はトーマスだった。
こいつは俺と軽音部で一緒に活動しているバンド仲間だ。
ちなみにトーマスとは、本名ではなく軽音部の先輩がつけたあだ名である。本人も気に入ったらしく、その名で呼んでいる。
さて飯に誘われた俺だが、飯が食いたいほど腹の減っているわけでもない。
「すまん今日はそんな気分じゃないから俺は帰る。」
と、トーマスの誘いを軽やかに切り抜けると俺は、そそくさと下駄箱に向かった。
下駄箱から靴を出そうとした俺だったが、そういえば読みたいラノベが図書室にある事を思い出した。
悪いなトーマス、今の俺はラノベが読みたいんだ。
俺はトーマスに見つからないように、図書室に向かった。
最初のコメントを投稿しよう!