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「うん。相澤さん、いっつも教室にいないし、探しても見つからないし、たまに教室に居ても話し掛け難いし。進路希望の紙出してって、なかなか言えなくてね。」
「……………。」
「なんか普段から緊張感に包まれてるって言うか……笑ったら絶対可愛いのに勿体無いって言うか。」
一瞬、脳が焼けたような痛みが走った。
ノイズのように視界が霞み、幼い頃にみた彼女の笑顔がはっきりと浮かぶ。
後悔、罪悪、焦燥、色々な衝動が一気に駆け抜けて消えた。
「………そうだな。俺も、そう思うよ」
「でしょう?クラスの中には相澤さんを悪く言う人もいるしね……お高く止まってるとか、態度が気にくわない、とか。本人はまったく気にしてないみたいだけど、クラスメートとしては見過ごせないんだよ。仲良くやりたいもんね。」
「………ああ。」
「それに……相澤さん、儚げって言うかさ、見ていて凄く不安になるときがあるんだよね。」
「え?」
密が顔を上げると、委員長は照れ臭そうに苦笑した。
この場の雰囲気のせいか、放課後の閑散とした風景のせいか、普段の彼女よりもどこか大人びて見える。
「私、委員長やってるしね。これでも色々とクラスの事を考えてるんだよ。で、あんまり言いたくないけどこのクラスの一番の問題ってやっぱり相澤さんなんだよね。だから出来るだけ気にかけるようにしてるんだけど、そうしてる内に思ったの。」
「…………」
「相澤さん、無理してるって。多分彼女、私達なんかよりずっと明確な未来を持ってるんだと思う。余所見しないで、一生懸命に何かを成し遂げようとしてるんじゃないかな。だって相澤さん、私達と全然違うんだもん。行動の一つ一つに無駄が無いって言うのかな……ううん、"一挙手一投足に全て理由がある"って言った方がいいかもしれない。」
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