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「……………。」
「でもそれって、"遊びが無い"って事だよね。心にゆとりが無いって言うのか、私が心配してるのはそこなんだ。目的しか見てないから、周りが見えてない。支えてくれる人がいるなら良いけど、いないならやっぱり不安だよ。」
支えてくれる人。
自惚れて言うなら、その位置にもっとも"近かった"のは自分だろう。
そうなりたいと思った事もある。
否、今でもそう思っている。
「誰かそういう人が居れば、相澤さんも変われると思うんだけどね。」
委員長が再び苦笑した。
それは、まるで。
この少女はそんな事を微塵も考えていないと知りながらも、まるで。
"その誰かはお前じゃない"と。
そう……言われたような気がした。
「あ……ごめん、あんまり関係ない話だったね。紫藤君、もう帰るんでしょう?」
「え………あ、うん」
「そっか、気を付けてね。じゃあ、また明日。進路希望、ちゃんと持って来てね。」
「………あぁ」
頷くと、委員長は満足そうにその場を辞した。
残された密は机の中に手を入れる。
一枚のプリントが手に触れた。
「持ってくるも何も……」
そもそも、持って帰ってさえいない。
進路希望調査。
そんなものは机の中に入れっぱなしだった。
無論、白紙である。
そこには何かを記入した痕跡もありはしない。
「…………。」
くしゃりと机の中でプリントを握り潰す。
八つ当たり以外のなにものでもない。
"その誰かはお前じゃない"と。
そう感じてしまった自分の腹立たしさを、少しでも晴らしたかった。
だが、勿論、当たり前だがそんな行動に何の意味もない。
「………帰ろう……」
一人呟き席を立つ。
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