一章~少年ハ少女二過去ヲ見ル~

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鞄を掴んで廊下に出ると、そこは夕日に染められてオレンジ色だった。 談笑する生徒を所々に配置し、影は背を伸ばして床を這う。 これも、何気ない、味気ないこんな風景も、"色褪せていなければ美しく感じたのだろうか" 「…………詩人だな、俺」 くだらない事を考えていると、密は己を嘲笑った。 足を踏み出し、廊下を歩く。 「お、じゃあな密」 「あぁ、また明日。」 見知った人物の横を通り過ぎ、階段へ。 三年は一階、二年は二階、そして一年生が三階。 この高校は、進級する事に階が下がっていく。 それはつまり、下に向かうにつれ粛々としていることを意味していた。 階段を下りると、まったく同じ景色が飛び込んでくる。 窓の外に目を向けなければ、何回にいるのか分からなくなりそうな程に寸分違わぬ造り。 生徒は皆無で、廊下はひたすら日の光に染められていた。 三年生の教室の前を通過する。 全部で五つ。 全ての教室が前方、後方共に扉は開放されており、中には規則正しく机と椅子が置かれている。 更に進むと図書室があった。 二階のこの場所は職員室になっている。 三階では視聴覚室だ。 そこを通過すれば下駄箱がある。 下駄箱のすぐ横にも階段はあり、そちらから下りてくれば上級生の教室前を横切る必要がない。
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