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鞄を掴んで廊下に出ると、そこは夕日に染められてオレンジ色だった。
談笑する生徒を所々に配置し、影は背を伸ばして床を這う。
これも、何気ない、味気ないこんな風景も、"色褪せていなければ美しく感じたのだろうか"
「…………詩人だな、俺」
くだらない事を考えていると、密は己を嘲笑った。
足を踏み出し、廊下を歩く。
「お、じゃあな密」
「あぁ、また明日。」
見知った人物の横を通り過ぎ、階段へ。
三年は一階、二年は二階、そして一年生が三階。
この高校は、進級する事に階が下がっていく。
それはつまり、下に向かうにつれ粛々としていることを意味していた。
階段を下りると、まったく同じ景色が飛び込んでくる。
窓の外に目を向けなければ、何回にいるのか分からなくなりそうな程に寸分違わぬ造り。
生徒は皆無で、廊下はひたすら日の光に染められていた。
三年生の教室の前を通過する。
全部で五つ。
全ての教室が前方、後方共に扉は開放されており、中には規則正しく机と椅子が置かれている。
更に進むと図書室があった。
二階のこの場所は職員室になっている。
三階では視聴覚室だ。
そこを通過すれば下駄箱がある。
下駄箱のすぐ横にも階段はあり、そちらから下りてくれば上級生の教室前を横切る必要がない。
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