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―――小さな頃に夢見た未来は、とても美しいものでした。
……眠りの中で、相澤 薫は夢を観ていた。
――幼なじみのひぃ君が手を引っ張ってくれて、私は遅れないよう一生懸命に走るのです。
……もう正確な年数は思い出せない。
ただ、小さな頃に、こんなこともあったと、夢を観ながら過去を覗いていた。
――ひぃ君と一緒に遊ぶのが、私の楽しみでした。
……夢に出てくる少年は、いつだって横顔だった。
彼は常に前を向き、彼女は常にその横顔を観ていたのだ。
――ひぃ君と一緒に遊ぶのが、私の幸せでした。
……きっとそれは、いつまでも続くと思っていたのだ。
時の流れの無情さを知らず、運命の残酷さなど考えもせず、だからきっと、相澤 薫は、"世界の全てが味方のように思っていた"
――ひぃ君と一緒に遊んだのが、私の恋の始まりでした。
……何もかもが幸せだった。
だからこそ何もかもが美しかった。
――私はずっと、ひぃ君と一緒に居たいです。
……だからずっと、私は彼を突き放している。
――だからずっと、私はひぃ君と笑って居たいです。
……その為にずっと、私は彼を避けている。
――その為にずっと、私は私でいたいです。
……その為にきっと、私は私であり続ける。
――その為ならきっと、
……その為ならきっと、
――私は世界を愛します。
……私は世界を憎みます。
――白亜に塗り潰される景色……相澤 薫の"夢"は、ここで"終わった"――……
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