一章~少年ハ少女二過去ヲ見ル~

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ありきたりな話だった。 ここは、面白くもない街で。 それは、面白くもない日々で。 そこは、何一つ変わらない日常の一場面。 そんな世界に諦めている、ありきたりな話。 紫藤 密(しどう ひそか)は帰宅途中、一人の少女に出会して足を止める。 夕暮れに染まる長い髪。 まだまだあどけなさを残していながら、それを必死に隠そうと引き締められた表情。 多分彼女は、万人が認める程に美しい少女ではないだろう。 だが確かに、そこには確かに目を引くだけの華があった。 黄昏がそう見せるのか。 ただ一人で歩くその姿がそうさせたのか。 密は彼女の為に、その足を止めたのである。 「……よぉ。今帰りか、薫。」 相澤 薫。 俗な言い方をすれば、彼女は"幼なじみ"に該当する。 彼の前を歩く少女。 彼女は、声を掛けられたにも関わらず、その足を止めない。 振り返りすらしない。 ただ、一言だけ、呟いた。 「そう。じゃあね、紫藤君。」 「……………」 あぁ、本当に。 "まったくもってありきたりな話だ" 幼なじみなんて単語が珍しくもなんともないように、年月を重ねれば繋がりが薄れていくのもまたよくある話。
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