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つまり、これが彼の世界だった。
密は、"立ち止まったまま歩く事が出来ずに、いまだ歩き続ける少女を見ている"
想いはひたすら過去に。
約束はあの場所に。
そして、"抜け殻が此処にある"
一歩も動かず、動けず、ただ見送る一人の少女の後ろ姿に、密は過去を思い返すのだった……‥‥
★★
「私ね、ひぃ君と一緒に遊ぶの大好きだよ!」
そう、相澤 薫は笑顔で言った。
それはひまわりのような笑顔で、多分、今まで何度となく向けられてきた笑顔の中でも取り分け綺麗な笑顔だったと密は思う。
幼い頃の話である。
常に共にいて、いつでも密は彼女の小さな手を握り締めていた。
毎日のように彼女の家に向かい、自然の少ないこの街で、住宅しかないこの場所で、たった一つの、まるで、建設を繰り返した際に余ってしまったスペースを誤魔化すように作られた小さな公園で、泥だらけになるまで一緒に遊ぶのだ。
「一人じゃつまらないし。ひぃ君と一緒にいないと楽しくないんだもん。」
そう言ってくれるから、密は彼女の手を握り締めていられた。
「でも、お洋服は汚しちゃダメだってママに怒られちゃった。」
そう笑ってくれたから、密は彼女の傍にいたいと思った。
それは、単純な迄に明快な"恋心"
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