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自室のドアを開けると、陰りしかない廊下に朱色の光が射し込んだ。
部屋のカーテンが開いている。
窓の外は実に代わり映えのない夕暮れで、その光に密は目を細めた。
鞄を床に投げ、カーテンをきっちりと閉め、密はそのままベッドに倒れ込む。
何もないから、することもない。
どうせ最初から、何もする気にならない。
高校も二度目の夏休みを目前に控えて尚、密の生活に変化はない。
進路、将来、未来、夢。
そんな単語が教師の口から飛び出すことも増えてきた。
学友達も前を見据えて歩き続けている。
そして、"変わらずに歩き続ける幼なじみの姿を見た"
「………なに、やってんだろうな……俺」
ベッドに倒れ込んだまま、呟く。
「ほんと、いつまで引きずってんだか……」
帰り道に彼女に会ったからか。
無意識の内に口から出た言葉に、自嘲する。
女々しいにも程がある。
"彼女の興味はとっくに自分から逸れていると言うのに"
そんな事実は、等の昔に分かりきっていることなのに。
何があったのか、今でも密は分からない。
ただ、幼い頃から常に一緒だった少女は、ある日を境に会話さえ拒むようになった。
笑顔は、一度も見れなくなった。
愛称で呼び合う事もなくなり、苗字を抑揚なく告げられるだけになっていた。
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