一章~少年ハ少女二過去ヲ見ル~

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自室のドアを開けると、陰りしかない廊下に朱色の光が射し込んだ。 部屋のカーテンが開いている。 窓の外は実に代わり映えのない夕暮れで、その光に密は目を細めた。 鞄を床に投げ、カーテンをきっちりと閉め、密はそのままベッドに倒れ込む。 何もないから、することもない。 どうせ最初から、何もする気にならない。 高校も二度目の夏休みを目前に控えて尚、密の生活に変化はない。 進路、将来、未来、夢。 そんな単語が教師の口から飛び出すことも増えてきた。 学友達も前を見据えて歩き続けている。 そして、"変わらずに歩き続ける幼なじみの姿を見た" 「………なに、やってんだろうな……俺」 ベッドに倒れ込んだまま、呟く。 「ほんと、いつまで引きずってんだか……」 帰り道に彼女に会ったからか。 無意識の内に口から出た言葉に、自嘲する。 女々しいにも程がある。 "彼女の興味はとっくに自分から逸れていると言うのに" そんな事実は、等の昔に分かりきっていることなのに。 何があったのか、今でも密は分からない。 ただ、幼い頃から常に一緒だった少女は、ある日を境に会話さえ拒むようになった。 笑顔は、一度も見れなくなった。 愛称で呼び合う事もなくなり、苗字を抑揚なく告げられるだけになっていた。
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