一章~少年ハ少女二過去ヲ見ル~

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だから、自分は何か、致命的なミスをしたのだと気付くのに時間はかからなかった。 楽しかった日々が、ありきたりなものだと悟ったのはその時だ。 以来、密の世界は常に色褪せている。 幼少期の記憶があまりに眩し過ぎて、色彩は失われてしまった。 「………………つまらねぇよな、実際」 そう。 つまらない。 ただそれだけを、繰り返し口にする毎日。 そこに意味なんて大層なものはない。 故にこそ、密は自身を謗(そし)るのだ。 "抜け殻"と。 「あぁ……今日仕送り入ってるんだっけ……夕飯買うついでに下ろしてくるか……ってほとんど使ってねぇからまだ余裕あるか。」 何もない。 欲しいものもない。 親の仕送りは貯まるばかりで使い道もない。 心配性の母親が今の彼の生活を目の当たりにしたらどんな顔をするだろうか。 考えるのも億劫だ。 何もかもが惰性。 何をしても怠惰。 「もう………何もかもが面倒臭い………」 睡魔が襲う。 疲れているのだと感じた。 はたしてそれは体か心か。 自問にさえ自答することなく。 密の1日は、早々に終わりを告げた。
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