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和装のもう一着、打ち掛けは式場で一番古いデザインのものを用意してもらった。
宣伝の写真はわりと最新モノを使用するが、敢えて古いもので親の世代に指示を貰うのが狙いだ。
場所ももちろん神殿。
式場の衣装とカツラを使い、昭和の時代の結婚式…ともすれば、家庭で行われているかのような雰囲気を出した。
「す、ステキ…。」
「懐かしいわ…。」
着付けを手伝ってくれた式場の年配スタッフから、こんな声が漏れる中、二人は一番緊張した面持ちで撮影に挑んだ。
拓「お二人さん…戦時中の結婚式じゃないから。
もっと幸せオーラ出してよ。
そうだな…雄平くん、悠里にキスしてみようか。」
雄「この…古式ゆかしき場所で?」
悠「ありえん。」
拓「まあまあ…やってみてよ。」
チュッ
カシャッ…カシャッ…
拓「雄平くん、ほっぺでよかったんだけど…まあ、いいや。
いいのが撮れた。」
雄「…先に言ってよ。」
悠里は、唖然としたまま動かない…。
いきなりの…口へのキスだったから。
悠『…え…?
ドレスでもキスなかったのに…。』
有「はい、拓郎…これで終わりでいいわね。」
拓「OK!!いいよ。
ふたりとも、お疲れさん!!」
唖然としたまま、スタッフに連れられて控え室に戻された。
「最後の…やっぱりよかったですよ。
結婚式らしくてね。
パンフレットが楽しみです。」
スタッフの嬉々とした声に…あいまいに笑う悠里だった。
悠『ホントに結婚式した気分だわ…。』
同じことを、雄平も思っていた。
雄『写真でこんな気持ちになるなら…模擬結婚式はヤバいな、マジで…。』
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