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模擬結婚式が春休みにあるとわかり、悠里はつかの間の休みをもらった。
試験勉強のためもあるが…琉貴と過ごす時間が欲しかったから。
週末、ようやく二人で会うことになった。
ちょうどその日はバレンタイン。
スタッフの方に教えて貰った美味しい店のチョコを購入し、待ち合わせに向かった。
琉「悠里!!」
すでに到着していた琉貴は、大きく手を振った。
大きい琉貴は、立っているだけで十分目立つ。
悠「お待たせ、しました。」
琉「…行こうか。」
お互いに手を繋ぎ、歩き始めた。
駅前というのもあり、人もたくさんいて…中には悠里だと気づいて振り返る者もいた。
気にしないで歩く二人…。
悠「どこ、いくの?」
信号で止まったときに、琉貴の手を引っ張って聞いてみた。
琉「…内緒。」
悠「内緒?」
「あの…。」
二人で振り返ると、小学生くらいの女の子が居た。
悠里は、何?と首をかしげる。
「お姉さんは声出してないのに、どうしてお兄さんは答えたり出来るの?
お兄さん、魔法使い!?」
琉「プハッ…!!
魔法使いか…マジで!?」
笑い出す琉貴に、悠里が肩を叩く。
悠「琉貴さん!!ちゃんと、話して!!」
琉「はいはい…。
あのね、お姉さんの口…口の動きで、話してることがわかるんだよ。
声が出なくても、口はちゃんと動いてるでしょ!?
じゃ、お姉さんが何を言ったか当ててみて。」
悠「こんにちは。」
悠里は、なるべくゆっくり話した。
「こんにちは…?」
琉「な?わかるだろ!?
魔法じゃなくてごめんな。」
「ううん、でも…すごい!!
お兄さんは、天才なんだね。」
琉「天才じゃないよ。
でも、知りたいことをよく観察したり、君みたいに聞いてみることって大事だよ。」
「わかった…ありがとう!!」
女の子は、パタパタと走っていった。
悠里と琉貴は、女の子をしばらく見つめ、再び歩き出した。
琉「俺、ずいぶん誉められたな。
知らない子に誉められるって…案外嬉しいもんだな。
魔法使いに、天才だって…。」
悠里は、微笑んだ。
小学生にきちんと対応する琉貴の優しさや、自分のことを恥ずかしいと思わずに説明してくれたことが嬉しかった。
悠『ありがとう、琉貴さん…。』
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