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それから数日。
試験や拓郎の写真集のこと、点字訳の締め切りでバタバタしているうちに、この日を迎えてしまった。
卒業式。
3月1日が一般的なのだが、悠里の高校は3月3日が恒例である。
卒業生に《雛あられ》と桃の花を手渡し、第二ボタンを貰えたらカップル成立…なんて言い伝えのような話もチラホラある。
悠里は、ボランティア部の卒業生達に《雛あられ》を準備し、学校に向かった。
琉貴にだけ渡したいが、多分無理だろうと半ば諦めている。
「卒業証書、授与。」
悠里は、何故か緊張していた。
これが別れではないと分かっていても、もう学校で会えないと思うと…やはり切ない。
隣で、那智がギュッと手を握ってくれた。
「神矢 琉貴」
その瞬間、ギュッと目を閉じ、那智の手を握り返した。
紗奈、鷹人…。
杜幸、さゆり…。
生徒会長同士の送辞、答辞があり、あっけなく式は終わってしまった。
卒業生が退場するとき…ほんの一瞬だけ、琉貴と目が合った。
ニコッ
悠里も急いで微笑み返した。
悠『琉貴さん、おめでとう。
そして…これからもよろしく…。』
琉貴の去っていく背中にそう呟いた。
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