新たな道

24/26
前へ
/635ページ
次へ
それから数日。 試験や拓郎の写真集のこと、点字訳の締め切りでバタバタしているうちに、この日を迎えてしまった。 卒業式。 3月1日が一般的なのだが、悠里の高校は3月3日が恒例である。 卒業生に《雛あられ》と桃の花を手渡し、第二ボタンを貰えたらカップル成立…なんて言い伝えのような話もチラホラある。 悠里は、ボランティア部の卒業生達に《雛あられ》を準備し、学校に向かった。 琉貴にだけ渡したいが、多分無理だろうと半ば諦めている。 「卒業証書、授与。」 悠里は、何故か緊張していた。 これが別れではないと分かっていても、もう学校で会えないと思うと…やはり切ない。 隣で、那智がギュッと手を握ってくれた。 「神矢 琉貴」 その瞬間、ギュッと目を閉じ、那智の手を握り返した。 紗奈、鷹人…。 杜幸、さゆり…。 生徒会長同士の送辞、答辞があり、あっけなく式は終わってしまった。 卒業生が退場するとき…ほんの一瞬だけ、琉貴と目が合った。 ニコッ 悠里も急いで微笑み返した。 悠『琉貴さん、おめでとう。 そして…これからもよろしく…。』 琉貴の去っていく背中にそう呟いた。 ・
/635ページ

最初のコメントを投稿しよう!

146人が本棚に入れています
本棚に追加