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「何、ニヤニヤしてんの?」
蔑んで見てくる目からして、本当だろう。
ポツ、ポツ
何処かで経験した、嫌な予感。
「雨…降ってきた。」
シノの声と俺の声が重なる。
お互いの顔を見て、笑っているうちに雨が強くなっていく。
俺の身体もシノの身体もずぶ濡れになるまでにあまり、時間はかからなかった。
この頃の俺はまだ気づかなかった。
シノに恋をしていたことを。
ずぶ濡れのシャツで二人はしゃいでいた。
濡れたアスファルトの坂道を越える度に、俺達は迷っていたんだ。
知らないうちに、無意識に、きっと何もかも間違いじゃないはず。
そう感じていた。
暑い日が続いていた、夏、真っ盛りの頃。
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