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少しだけ冷たい風が吹いている。 まだ少し明るいから、夕暮れの帰り道。 俺達は肩を寄せて歩いている。 会話は途切れている。 高鳴っていく心と、込み上げてくる思いを押さえながら、俺は歩いている。 家に着いた頃には外はすっかり暗かった。 音のない部屋の片隅で、シノは疲れたのか、身体を横たえている。 「…昇」 今にも消えそうな先細い声。 「ん」とだけ返事を返す。 「次の季節も…変わらずにいたい。…このまま、時間が止まれば良いのに…」 そう言う君の瞳は何かを求めている。 もう限界だった。 目の前で何かをうったえるシノに自分の気持ちを伝えたかった。
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