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扉を開けた途端に冷たい風が頬を撫でた。
「今宵は冷えます、風邪を引きますよ」
私は窓を開けっ放しにしている『少女』に声を掛けた。
小学校低学年くらいだろうか、おさげの似合うくりっとした瞳が、放たれた窓側にちょこんと座っている。
辺りには人影らしいものはなく、どうやら1号車にはこの少女しかいないようだ。
少女は一瞬潤んだ目をこちらに向けるとまたすぐに外を眺める。
「君、一人なのかい?」
少女からは返答も動きも感じなかった。
ただじっと外を眺め、何かを待っているような瞳が伺えた。
雪が吹き付ける。
それでも少女は動かない。
「切符は持っているかな?」
返事はない。
さりとて、これでは仕事にならない。
「では、他の方が終わりましたらまた伺います。良い旅を」
私は無機質なお手洗いを横目に、次の車両へ向かった。
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