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「―――リス…。――ら、アリス。起きてく…な…――。」
ぼやぁっと霞がかかった様な頭で"あの"野太い声を"この"耳に感じる。
体はふわふわと。
心はとても安らかで。
なんだか『魂だけ』という表現がまるまる当てはまるような気がする。
そんな中ナイトメアの声を頭で反芻しながら次の声を耳で感じている。
もちろん内容なんかちっとも入ってこない。
「――アリス! ほら、アリス!! 目を覚まして!!」
こんな風に大声で呼びつけられるまでは。
やっと意識が声だけに集中する。
ゆっくりと瞳は歪んだ白を理解し始める。
「わぁ、なんだ、…ナイトメアか。何回目でも慣れないものだな。この中間地点ってやつは。」
ここは『中間地点』。
夢の世界と現実世界の狭間。
夢の世界に行くにはいささか面倒なことがある。
白塗りの空間なんだがどっちが上でどこが右なのかもまったく定かでない。
だが『下』には小さめな明るくなっている穴が見える。
「まったく、起こすこちらの身にもなって欲しいもんだね。と言っても君は寝ているんだけどね。」
軽く『ククク』と笑い声を上げると、左手でフードをさらに深く被り、右手で僕の後方へ人差し指を伸ばす。
「ほらぁ。出口が見えたよぉ。あそこを出たら君はジュリアス。私は『すべて』。」
「新しい、僕の世界だね。さぁ行こうか。」
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