記憶の片隅

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「――さぁ、吐け!」 急に声が聞こえた。 音という音が、やっと僕の耳に届いてくる。 すると、たちまち騒がしくなる。 母さんの苦しむ声。 辺りが燃え上がる炎の音。 遠くの方から途切れる事の無い悲鳴。 そんな情景を前に僕は身動きできないでいた。 暗闇の中で徐々に広がる橙色の炎から目を逸らせないでいた。 瞳に映るこの色が―― 忘れることのないこの風景を―― ――僕は……
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