一話 レン

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 ̄ 小さな頃、決めた名前。 七瀬 鏈(ナナセ レン) 七瀬 恋(ナナセ レン) 漢字だけが違う私達は呼び名を変えた。 「俺はレン」 「私はコイ」 これが私達の呼び名。 頭の中で微かに響いた過去の会話。 瞼を持ち上げ、青い空を瞳に捉えることで夢なのだと実感した。 「ッ……!」 殴られたように痛い頭。 「大丈夫か…?夏だから気をつけろ……」 空を見上げる瞳を少し下げれば鏈がいた。 「鏈…か…。暑くて死にそーー…」 「恋、長州まで後、少しだ…」 夏の猛暑に重くなった足は持ち上がることはない。 「鏈くー…ん。おぶってくれたまえ」 にっこり笑っておねだりする恋。 「駄目。恋、まだ体力あるだろう」 図星をつかれ、口を尖らせながら立ち上がる。 _
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