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「……仕方がない、部長、起きてください部長!」
副部長の熱いビンタが部長の頬に炸裂する。
ぶべらっ!ぽあほっ!あべっ!たわばっ!
やがてアソパソマソのごとき紅の頬になった部長はついに立ち上がった。
「コージ……いや、副部長、お前のおかげで正気に戻ったよ、ありがとう!ありがとう!」
「部長!」
熱く抱擁を交わす二人。僕ら二年には日常茶飯事な光景だが、やはり一年と女子には刺激が強過ぎたようだ。ドン引きしている。……中には怪しい視線もあるけど。
この、熱血のやりとりが済む前に、女子とタイマンでの勝負を申し込もうと、二年男子実力筆頭の茅橋は女子のほうへ歩み寄っていった。
「男子VS女子ッ!! シングルス三本勝負でどうですかね?」
「んー……?別にいいけど、それじゃああたしたちの圧倒的勝利で終わっちゃうかもよ?」
途端に周囲の男子が怖気づく。女子のベスト3はシングルス勢なのだから当然ではある。
「それでもオレは負ける気はありませんよ」
茅橋は強く主張する。その姿には遠巻きから見てもオーラが漂っていた。
なにより、その声は芯が通っていて、よく聞こえる。
彼もまた熱い魂の持ち主である。女子軍勢の中には耳を塞いでいる子すらいる始末だ。
僕の心を捕えたあの子は9人の中でも一番、熱心に茅橋の声に耳を傾けていた。他の人達は、どこか遊びで構うような余裕を持っているというのに。
って遠巻きから見ている場合ではなかった。
パッシヴはいけない、アクティブに動くんだ。
あの子とテニスがしたい、あの子と話してみたい。
彼女を見ていたら、自ずと、いつの間にか、そんな気分になっていた。
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