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あたしは、静かに宿ったこの命を守りたかったのだ。
母親の本能で、この子を守ろうと必死だったのだ。
耀ちゃんとよりを戻せば、恐らく下ろすしか道はない。
だから、どんなに好きでも戻ることはできなかった。
「そうか」
長い長い空白の後、父がぽつりと言った。
あたしの短い言葉では、恐らく何ひとつ満足に把握できてはいないだろう。
それでも父は、今ここで詳しく聞き返すことをしなかった。
「そうか」
悟りきったような声音で、もう一度そう呟く。
「うん、ごめん。もう決めた」
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