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一度授かったこの命を、この奇跡を、あたしはどうしたって捨て去ることができない。
あの手紙を読んでいなければ、今頃、耐え切れずに耀ちゃんと再会していたかもしれないけれど。
今でも大好きな耀ちゃん。
信じてもらえなかった自分が嫌で別れたくせに、彼に真実を伝えないのは矛盾しているかもしれない。
それでも、受け入れてくれる彼の姿が想像できるからこそ、あたしは黙っているしかできない。
耀ちゃんが好きだから。
「帰ってきなさい」
大きく息を吐き出してから、父がいつものかすれ声でそう告げた。
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