8

6/7

255人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
一度授かったこの命を、この奇跡を、あたしはどうしたって捨て去ることができない。 あの手紙を読んでいなければ、今頃、耐え切れずに耀ちゃんと再会していたかもしれないけれど。 今でも大好きな耀ちゃん。 信じてもらえなかった自分が嫌で別れたくせに、彼に真実を伝えないのは矛盾しているかもしれない。 それでも、受け入れてくれる彼の姿が想像できるからこそ、あたしは黙っているしかできない。 耀ちゃんが好きだから。 「帰ってきなさい」 大きく息を吐き出してから、父がいつものかすれ声でそう告げた。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

255人が本棚に入れています
本棚に追加