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まるで凍りついたように固まる二人は、視線だけを左右に暗闇に向けて動かしていた。
暗闇に鳴り響くドラの音。狐が去った今、そこには恐怖しかなかった。
それから数分後に起こった出来事はさらなる恐怖を二人に与え、それは今も時折よみがえってくるそうだ。
耳に入ってくるガサガサという音と共に近付いてくる足音。
今までに経験した事がないような緊張と恐怖。
"それ"はまるで加工された映像のように現実的には不自然に、暗闇の空間に浮き出るように姿を現した。
全身が枯れ枝のような物で覆われた"それ"は巨大なミノムシのようだったが、枯れ枝の束から出た二本の足は明らかに人間の素足で、ゆっくりと歩を進めて二人に近付いてきた。
"それ"は座り込む二人の目の前まで来て身を屈めると、二人の顔をなめまわすように交互に眺めた。
枯れ枝の束の隙間からは黄色く光る目のようなものが見えて、顔に吹きかけられる吐息はひどく生臭い悪臭だった。
永遠のように感じる長い時間の中で、Cさんは大量の汗をかいていた。
暑くもない環境で頭から汗を流したのは、甘党のCさんがCoCo壱の1辛のカレーを食べた時以来だったらしい。
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