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「ほんと冷たいよねえっ君ってさ」
細い華奢な背中にポツリと呟けば曽良は振り返る
「あんたは、」
「?」
「…なんでもありません」
わざとらしく咳払いをすれば曽良はまたひとり歩き出す。芭蕉は慌てて曽良のあとをついて行こうと立ち上がった
「ま、待ってよ曽良く」
「動かないで、芭蕉さん」
「へ」
冷徹な一言のあとに続くように、風を切る音が響く。途端に芭蕉の後ろで何かが地面に崩れ落ちる
「っ、?」
恐る恐る芭蕉が振り返るとそこには息絶えた異形のもの。
「ま、まただ…」
「最近多いですね」
曽良は血のついた細い鉄弦を布で拭く
「これ、なんだろうね…妖怪かなぁ」
「さあ?食べてみたらどうです?」
「ひ…ひど…」
芭蕉はうなだれて曽良を見つめる。背中に下げられた大弓のせいで芭蕉がやけに小さく見えた
「…なにか、嫌な予感がしますね」
空を見上げ、曽良は眉を潜めた。
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