沖田総司

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桶に張った水で手拭いを濡らし 顔を拭おうとした時、燗酒とともに 土方さんが戻ってきた どうやら、あの苦い上にちっとも効きやしない 薬を飲ませるつもりらしい 意識の無い人間にどうやって飲ませるつもりなんだか…… 土方さんを横目でみながら 彼女の顔を拭いてやれば 頬や額に擦り傷があり 何とも痛々しい 女人なのに、顔に傷を作って…‥ 嫁の貰い手が無くなったらどうするのか 顔から腕を拭っていると 程よく温くなった燗酒に、あの薬を混ぜ合わせた土方さんが 身を起こさせ、湯呑みを口元に持っていき飲ませようとしているが 咳き込み口の端から零れ落ちている 暫く思案し、あの薬を口にするのは ごめん被りたいが仕方ない 土方さんから湯呑みを奪い 一口ずつ口移しで飲ませて行く 全部、飲ませ終わる頃には私の口に あの薬の味が広がっていた筈なのに 自身が水を飲むより先に、彼女に水を口移しで飲ませていた .
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