はるのくに(英日+米)

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 「おや。慰めに来てくれたのですね」  風に運ばれ薄紅の花弁が膝の上にはらりと落ちたのに、少年は頬を綻ばせた。  中庭の桜は九分咲きといったところ。硝子越しでなく直に柔らかな色を愛でたいと、窓を開けていたのである。  うらうらと好い天気が続き、少しずつ優しくなってきた空気に気分も浮き立って。  「片付けには好い日和…」  花弁を袂にそっと仕舞い、家の中の大掃除を再開する菊である。
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