風切羽(日+英+米)

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 「ふん、奪ってやるのは簡単だけど…」  鼻を鳴らすアルフレッドに視線を向け、嘆息する。  ……閉じ込めておく事は可能なのだろうか。どんなに豪奢で堅固な鳥籠だとしても、いまだ飛ぶ力を隠したこの鳥を。  舞い納めた菊はすとんと力を抜いた。一旦畳の上に坐った後、弱々しく男に向かって笑んで…  ことん、と。意識を手放した少年の手を男は穏やかな様子で握ってやり、すぐに向き直った。  成り行きを見守っていた二人に対し、文句の付けようのない端整な礼をする。  「用が済んだなら帰るといい」  つんけんしたアルフレッドの物云いにも動じず、終始無言で男は去った。  「あー。俺も帰る」  「…そういえば君、本当に何しに来たんだい?」  「別に何だっていいだろ。じゃあな」  再びアルフレッドの膝の上に引き取られた菊の、たおやかな寝顔を少しばかり名残惜しげに見つめて。  アーサーは辞意を表し手を振った。  そう、遠い日の事ではないだろう。白い羽を翻して鳥が飛ぶのは。  その時は、また手を取り合えるだろうか。  かつてと同じく、柔らかな笑みで情を交わせるだろうか。  --次に逢う時は、あの闇色の瞳に強く見据えられたいと、願った。 天地の神にそいのる 朝なぎの海のごとくに 波たたぬ世を        〈昭和天皇御製〉
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