師匠の言伝

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ここに帰ってきたのは何年ぶりだろうか。 「・・・・三年ぶりだったか」 若者はそう言った。 その若者は整った顔立ちで、髪は綺麗な白色だった。声も少し高い。首からは黒い、十字架のネックレスがぶら下がっている。 黒いコートを着て、ボロボロのジーンズをはいている。 若者は、男が拾ったあの子どもだった。 そしてその若者は今、拾った男、師匠の家の前にいる。 「ただいま」 そして、その家に入る。 「・・・・なにも変わってないな。そういえば六年の間も、変わったことなかったな」 懐かしむように、その若者は呟く。 幾つかの部屋を回っていると、 "ガシャンッ" 小さな、鍵が外れるような音がした。 その音源を探ってみる。 ――どうやら、師匠の部屋からの様だった。 昔は入ることを禁止されていた部屋だ。 「・・・・いいですよね、師匠。」 悩んだが、入ることにした。
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