碧天

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両サイドに整列した選手達に、主審が勝敗とノーサイドをつげた。 弾ける様に喜びを爆発させる相手チームを背中に…ゆっくりとヘッドキャップをはずした俺は… ゆっくりとベンチにむかいながら もう一度空を見上げていた… 不思議に涙はでてこなかった。   『お疲れ様っ。』 マネージャーの則子が元気いっぱいの声でドリンクボトルを手渡してくれる。 「さんきゅっ。」 そういいながら則子の顔を見た。 「…っ!?」 『ん?どぉしたの?早く飲んじゃったら?』 「ぉ…おぉっさんきゅ。ぅん…さんきゅ」 びっくりした。 則子の笑顔には今さっき拭ったであろう… 真新しい涙の跡が残っていた。 (終わったんだ…) いつもは気が強くて 選手のケツをたたいてばかり居るマネージャーの…ユニフォームを洗い、部室を片付け、重いドリンクを一生懸命に運び… 3年間をともに過ごして来た則子の涙の跡を見た瞬間… 全てが終わった実感が、心の深い所からフツフツと湧き上がって来た…   (…終わったんだ…)   気が付けば… 涙がこぼれていた…   (…終わったんだな…)     3年間の青春が… 馬鹿でアホでどうしようもない仲間達と過ごした青春時代が… 終わりを告げようとしていた。     見上げれば… ただただ碧い空が涙で滲んで居た。
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