第一話

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  「熱い……」 「うおっ」  思わず変な声が出た。  いきなり膝立ちになったかと思うと、雫はパジャマのズボンに手をかけて、それを下げたのだ。しかし、幸いとでも言うべきか、足を抜かなければ脱げないということを失念しているようで、ズボンの下降は膝のあたりまでに留まる。  鈍った頭では脱ぐことすらままならない様子だ。 「んー?」 「おいバカやめろ」  どうして脱げないのかと首をかしげる雫の手を俺は掴んだ。そのまま、持ち上げようと試みる。だが雫の抵抗もあり、うまくいかない。  勉強会という言葉が再び意識から遠のくほど、俺は焦っていた。  露となった太ももは薄皮の剥けたようで、あまりにも瑞々しいそれが放つ色気に思わず迷いそうになるのだ。ただでさえ少し上に目をやれば、水色のパジャマに対比させるかのような薄いピンクの下着が裾からちらちらと覗くことだし(視界に映り込むものは仕方がない)。  雫のあられもない姿など飽きるほど見てきたのだが、今日のはまた違った趣を見せていることに気付いた。  雫はその印象に、まず快活さが先行するようなヤツだ。しかし、酒が入っているためか普段のそれは鳴りを潜めており、先ほどから見せる仕草にそこはかとない「女」を感じてならない。  つまり、初めて垣間見る幼なじみの側面に、俺は気後れしているのだった。 「ねえ、ぬげないよう」  しかし、この外面と内面のアンバランスさには困りものだ。悪態のひとつでもつきたくなる。まあ、だからこそ俺もまだ平静に努めることができるのかもしれないが。 「だから、脱ぐなっつって……あ」そこで閃いた。「俺が脱がしてやるから、お前はまず手を放せ」  端からすればとんでもない爆弾発言である。すぐそばには加奈もいるというのに、いったいなにをしているのだろうか。しかし、なりふり構う余裕はないのだ。俺の体裁など最早どうでもいい。 「うん」  思いのほか素直に雫は頷いた。手を放したのに合わせてズボンを持ち上げ、きちんと穿かせる。また脱ごうとされてはたまらないので、俺は胡座を組んだ足に座らせるようにして、雫の体を横抱きにした。とろんとした目を向ける雫に囁く。 「おやすみ」  言うが早いか、目を閉じた雫は寝息を立て始めた。穏やかに呼吸する雫の顔に目を落とし、俺はようやく体の力を抜く。  
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