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雫とは幼なじみで、加奈とは中学からの友人ということもあり、俺たちはよく行動を共にしている。だからといって、もちろん俺たちがクラスメート相互の親睦を図らず、クラスで浮いてしまっているというわけではない。確かに入学式からひと月が経ったばかりであるこんにちでは、まだまだお互いにぎこちなさを残したやり取りとなってしまうのが事実だが、それでも少しずつ彼我の距離を縮めていっているのが現状だ。
つまりは、グループだかコミュニティーだかを形成しつつある我らが一年二組のなかで、俺たち三人が取り分け仲がいいというだけの話である。
同じ中学出身で交友関係にあるヤツらも二組にいるし、それなりに新しい友人もできたが、どうしてだろうな。懇意な間柄であり、また気が置けない仲間と呼ぶべきものが異性であるこの二人なのは。
「つーか加奈。俺と雫がそんな関係じゃないことは、お前もよく知ってるだろうが」
「あのね。さっきみたいなことを所かまわずやっちゃうアンタにそんなこと言われても、まるで説得力がないのよ。雫は見ての通りだしね」
なにを今さら、と言わんばかりに睥睨してくる。その視線が横へとスライドしたのに合わせて俺も雫へと顔を向けてみれば、当の本人はなにを言われているのか理解できていないかのように笑っていた。
さすがに、こいつと同列に扱われたくはないな。俺は肩を竦める。
それに、雫とは園児時代からの付き合いのためか、そういう感覚がマヒしていると言っても過言ではなかった。言うなれば兄妹のようなものだろうか。振り返ってみても、家でも外でも俺の後ろをついてきてはベタベタしてきた過去しかなく、半ばそれを黙認している状態にあるのだと思う。
おそらく。客観的に考えればな。
俺個人としてはどうなのかって?
さてね。深く考えたこともないし、さして解き明かす必要があるとも思わないからなあ……
「とりあえず、サボった分はちゃんと働きなさいよ」
「おーっとっと!?」
言うが早いか、加奈は出し抜けにゴミ袋をこちらへと放り投げてきた。俺は思考を中断し、足がもつれそうになりながらも慌てて駆け出しては、山なりの軌道を描くそれをなんとかキャッチする。なぜか、ひどく重く感じた。
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