第一話

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   やがて掃除時間は終わった。  態度は渋々といった風で、口を開けばダルいダルいと言いつつも、我ながら草むしりに精を出したほうではないかと自負している。さすがにひとりでは手に余ったため、草の生えていない範囲が元々の駐車スペースである四角形の上に、小さな半円を置いたようなものとなってはいるが。  しかして、いま俺たちは加奈の拾い集めたゴミの処理を目的に、ゴミ捨て場へと向かっていた。分類用のゴミ箱や焼却炉もそこに設置されているため、学校内で出たゴミはそこへ運ぶ決まりとなっている。  グラウンドの片隅にぽつりと据えられたそこへ向かうには、当然ながら事故防止用のフェンスやネット沿いにグラウンドの脇を通るしかない。だが、とある事情により部活動が行われていないいま、俺たちは大胆にもグラウンドのど真ん中を突っ切っるショートカットを図っていたのだった。  なに、野球部のテリトリーに踏み込む気はさらさらないため問題ないだろう。 「ふう」  ため息を零したのは俺だ。ちなみに、ゴミ袋を自ら進んで持っている(ここ大事)疲労からくるものではない。  それに反応してか、俺の右隣を歩いていた加奈がちらりと一瞥をよこしてきた。まあさっきから定期的に嘆息していれば、嫌でもそうせざるを得ないだろう。いい加減、煩わしいと思っているのかもしれない。それを理解しつつもやっちゃうあたり、俺も構ってちゃんなのかなー。  ゴミ袋を持っていないほうの俺の手を掴んで、ブンブン振り回している左のバカには劣るけどね。 「さっきからなによ。言外に非難をほのめかしているつもりなのかしら?」 「いやいや、もうテストが始まっちまうんだなーと思ったら、自然と気が重くなっちまうわけでね」  ムダに引っ張るつもりもないのでさっさと白状してしまうと、目下のところ俺の頭を悩ませている懸念事項とは、まさにそれなのだった。学生ならばだれもが避けては通れない関門の、定期考査。あらゆる意味で平々凡々たるスペックしか有していない俺にとっては、毎度のごとく頭痛の種として俺を苦しめる存在だ。  なら勉強しろよ、と言うことなかれ。そこはそれ、みなまで言わずとも、大半の者は行間を読み、俺がそうしない理由を理解してくれるのではなかろうか。たとえ口が裂けようと、やる気が出ないからギリギリまで勉強しないだなんてことは、あくまでも口にするつもりはない。  
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