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尚は久しぶりに、海を通って家に帰ろうと思った。
普通に家に帰るのよりは多少時間がかかるが、たまにはいいだろうと思った。
尚は夜の砂浜をのんびりと歩く。
夜風が心地よくて、思わず深呼吸をしていた。
「……十年前のことを思い出すな」
そして、ふとミサトのことが頭を掠めた時、聞き覚えのある歌声が尚の耳に届いた。
「え……?」
この歌は……“希望”?
いや、違う。
この切なくもどこか愛しいテンポは……
俺がこの海で初めてきいたミサトの歌だ。
でもおかしいな。
あの時とは歌詞があきらかに変わっている。
「……あぁ、そうか」
尚は一人で考察し、一人で納得する。
「これはあの歌の続きなんだね。……そらはミサトのことを忘れてなんかいなかったんだね」
尚がそう呟くと、海のどこか遠くで、ぱしゃん、と水の跳ねる音がした。
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