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村正はバトルロイヤル開催中にこんなに静かなのを疑問に思ったが、あまり気にせずに、ポケットに手を突っ込みながらタダ廊下を真っ直ぐ歩く。
「んじゃ、ここら辺から片付けっか」
村正は、面倒くさそうな感じに頭をボリボリ掻く。
『あー、あー。村正、聞こえますかー?』
「ぬおっ!何だあ??」
村正は、突然耳元に聞こえた声に驚きながら、周りを警戒する。
その声の主は
「ん?サラ公か?」
サラ公とは、紗羅沙のことだ。
やんちゃな紗羅沙に村正が付けた愛称だ。
聞こえたのは、もちろん片耳に収まったスピーカーからだ。
『サラ公って言うな!せっかく援助してやろーと思ったのに』
「援助だあ?んなモンいらねえよ」
『いんや、いくら《元・忍術部》のアンタでも、実戦の殺し合いはしたことないでしょ?』
「そりゃそうだ。今の時代、忍者なんていてたまるかってーの」
『なら、援助受けといた方がイイ。その「第三音楽室」、中身面白いことになってるよ』
「ああ?どういう事だ」
村正は、ポケットから片手を抜き、耳のスピーカーを押さえ、雑音を消す。
『はい。これ、観てみ』
すると、村正のかけていた《メガネ》の内側のレンズに、モニタや“ビーム”の連射可能数やポインター以外の、小型な液晶映像が送られてきた。
そこには『第三音楽室』の内部の映像が映っていた。
しかし、内部は薄暗くなっていて、特に目立ったところはなかった。
「あ?これのドコが“面白いコト”になってるんだ?」
『よーく観てみ?』
紗羅沙の、意味深な言葉に、村正は怪訝な表情になる。
「んー・・・。ん?」
薄暗い映像の中、時折光を反射する光景が見えた。
「ん?何だ、こりゃ。糸?」
そう。
映像に映ったのは『第三音楽室』の中に張り巡らされていた何やら金属製の“糸”のようなモノだった。
「ワイヤー?」
『いや、違う。《部活動バトルロイヤル》開催中は、自分の部活動に関連する物以外の使用は認められていない』
「つまり、あの音楽室の中全体に張り巡らされてる“糸”は何だ??」
『“ギターの弦”だな』
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