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『第三音楽室』の扉には、鍵が掛かっていた。
「はあ?何だ《軽音部》の奴ら。バトルロイヤルに参加する気あんのかァ?それとも《カード》を守るための策略か?」
村正は、一度後ろへ1、2歩下がる。
そして、軽くジャンプして、足のつま先を床にトントンと突いて、
「おっ邪魔しまーすッ!!」
一度体を一回転させ、その勢いに任せて右足を思い切り音楽室の扉に打ち付ける。
専門的に言うと“後ろ回し蹴り”だ。
バコンッ!という鈍い音が響くと、鉄製の扉の施錠が強引にへし折られ、扉が開かれる。
扉に凹みができ、ガラス部分は半壊した。
《部活動バトルロイヤル》開催中は、校舎のドコを壊しても構わないというので、村正は手加減をしない。
それでも、村正は平然な顔で、ポケットに手を突っ込んでいる。
荒い登場にも、『第三音楽室』の中は静寂が支配していた。
中は、カーテンが閉め切られ、薄暗くなっていた。
村正は、元・忍術部の勘で、肉眼では見えないが、人間の気配はする。
「・・・」
村正は敢えて何も言わず、ポケットから小型の懐中電灯を取り出す。
カチッとスイッチを入れ、音楽室の中を照らす。
すると、音楽室内に張り巡らされた何本もの“弦”が光を反射した。
(はあ。こんな事して、どういうつもりだあ?)
村正は、もう一方の手で懐中電灯とは違う方のポケットに入れ、一本の“苦無(くない)”を取り出した。
忍者が武器にする、小型のナイフのような、黒曜石で作られた刃物だ。
村正は、苦無で自分の前を横一線に一振りする。
何度かプツン、プツンと音がし、目の前の何本もの“弦”が切れる。
(待ち伏せ型の戦略か。自分のテリトリーで待ち伏せし、敵が《カード》を狙って忍び込んで来たところをくもの巣のように張り巡らされた“弦”に絡ませて《メガネ》で敵を撃ち《生徒手帳》を掻っ攫うってか・・・?)
すると、村正は視界の端に一瞬の光を捉えた。
村正は、首を横に振る。
すると背後から、ジュッ!と何かが焦げる音がした。
「ほほう。これはこれは随分手荒な歓迎じゃねえか?」
村正は薄暗い闇に声を放つ。
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