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「ここにしよ~っと」
快華は、適当なスライド式の扉を開ける。
「何、ココ・・・?」
快華の目に映ったのは、“部屋全体が真っ黄色な”『美術室』だった。
「なになになに?何なのよココ!!」
快華が興味津々な顔で、部屋の中へズンズン進んでいく。
スライド式の扉が、自然に閉まる。
快華はそのことに何の疑問も抱かず、気づけばそこは、黄色一色に染まった部屋の中心だった。
扉の内側にも黄色く塗られていたタメ、扉が閉まった今は、黄色に囲まれている。
障害物にも黄色く塗ってあるのか、部屋全体が何も無い黄色の世界に見える。
「・・・ん?ココって確か『美術室』だったよねー?」
快華は周りを見渡す。
黄色。黄色。黄色。
どこからが壁なのか、どこが出入り口の扉なのか。
もう全てが分からない。
「・・・これ、何かマズイ感じ・・・?」
今頃気づいた快華。
すでに快華は敵の術中に入ってしまったのだ。
「フフフ。一人で敵陣に乗り込んで来るなんて。貴女、度胸が据わってるわね」
何も無い黄色い空間から声が聞こえる。
「だ、誰?何処にいるの?」
「それを言うワケにはいかないわ。だって、居場所がバレたら《カード》が奪われちゃうモン」
「・・・!!アナタ、美術部の部長さんでしょ」
「あら。勘がイイんですね」
快華は、自分の《メガネ》の内側のレンズの端に小さく表示されている安全装置のON、OFFが一目で分かるモニターを見て安全装置が入っている事を確認する。
そして、フレームの横に備わっているボタンに片手を沿え、もう片方の手を腰に付けた巾着袋の中に入れる。
その中には、快華愛用の発火玩具が入っている。
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