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「大丈夫よ、そんなに警戒しなくても。私以外の部員は全員外に行ってるから」
「外に・・・?」
「ええ。部長である私は《カード》を死守することに集中して、部員達は他の部活を襲う。良い戦略だとは思わない?」
清楚な女子生徒らしき声は、黄色い空間に響き、快華を惑わせる。
なぜだろう。この声には、自然と不信感を抱いてしまう。
まあ、一歩間違えれば自分の《生徒手帳》が奪われてしまうかもしれない。
「まあそういう事だから、貴女にはココでリタイアしてもらうわ」
自然な感じで言われたので、快華も理解するのに戸惑った。
瞬間、背後からジュッと何かが焦げる音がした。
快華が少し後ろへ視線を送ると、黄色い空間の中、一点だけ不審な黒い点があった。
(焦げ、跡・・・!?)
《メガネ》とは本来、スイッチを押して“ビーム”が出る際、定めた場所に正確に当てるため、余計な電磁波は放射する自動処理機能がある。
つまり、スイッチを押せば、無駄な電磁波が“眩い閃光”となって一瞬のレンズを光らせる。
つまり、相手の《メガネ》をよく見ていれば、“ビーム”の出るタイミングが分かるという事だ。
しかし、ここは全体が黄色という明色が隅々まで塗られているので、“ビーム”の前兆である閃光が、肉眼では捉えられなかった。
だから、
(どこから撃ってきてるのか分からない!!)
次から次へとジュッ!ジュッ!!という、物が瞬時に焦げる音が背後から聞こえる。
快華の視界の中では、一つ、また一つと黄色い空間に黒い点が増える。
快華は、ジッとするのは危険と判断し、とにかく、黄色い空間を駆け回る。
様々な遮蔽物にぶつかったりしたが、止まることなく快華は駆け回り続けた。
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