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扉からは、金属製のバケツを持ち、《メガネ》をかけた何人もの男女だった。
美術部の部員達。
美術部は、部長である海利を合わせ、総勢7人。
この学園は、全校生徒の人数も結構多いが、部活の多さからして、1部活に割ける人数が結構少ない。
金属バケツを持った部員達は、快華を取り囲むように立つ。
「部長が危ないと思って戻ってきたのが幸いしたようね」
快華を取り囲んだ《メガネ》をかけた一人の少女が言う。
「フフフ。ハハハハッ!」
海利は、自ら勝算を導き出し、余裕の笑みを浮かべる。
「頼りになる部員に囲まれて私は幸せ者だわ」
「何、言ってんの・・・。まだアンタ達が勝ったワケじゃないわよ」
快華は、無理矢理笑みを形成するが、顔には一筋の汗がたれる。
快華はソッと巾着袋に片手を忍ばせる。
よく見てみると、快華を囲んでいる部員達が持つバケツの中には、黄色いペンキがタプタプに入っていた。
「知ってる?《メガネ》ってね、電磁波を発生させるから、水に濡れると危険でしょ?」
「・・・」
快華は答えない。
手に触れる発火玩具の感触を確認するのに精一杯だったからだ。
(これじゃない。“アレ”はどこ!?)
快華は巾着袋の中で手をまさぐらせる。
「だから、感電死っていう最悪な結果をもたらさないタメに、一定の量以上の液体に触れると、その機能を自動的に停止するよう、処理機能が備わってるの」
囲んでいる部員の後ろに悠々と立っている海利。
ここで《メガネ》を乱射して海利を昏倒させるのもイイのだが、そうしたら囲んでいる部員達に袋叩きにされるのは目に見えている。
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